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ひいきめにみれば、もうちょっとクスリが改良されれば、いい結果が出るかもしれないという、期待が持てる話でもありました。
中性脂肪も大切な栄養素ですが、コレステロールとはまったく別のものです。
この中性脂肪を下げるJというクスリの大規模な調査がヨーロッパで行われ、レポートが発表されています。
先ほどの調査とは違い、わずかな差ですが、本物のクスリを飲んだ人のほうで寿命が短くなってしまいました。
死因を調べたところ、本物のクスリを飲んだ人たちの間で、ガンによる死亡が多くなっていました。
どうも、クスリの副作用としては、ガンがやはり問題になるようです。
たいていのクスリは人間が作った化学物質ですから、副作用としてガンが多くなるという話は、なるほどと思ってしまいます。
中性脂肪を下げるこのクスリは、コレステロールを下げるクスリより副作用が強いのかもしれません。
その後も、中性脂肪を下げるクスリの調査は、いくつか行われています。
しかし現在のところ、寿命を延ばすことが証明されたクスリは、まだ1つもありません。
画期的な調査結果ごく最近になって、コレステロールを下げる新しいクスリが、日本とアメリカでほぼ同時に発明されました。
PとCというクスリで、名前が似ており、作用もほとんど同じです。
同じクスリといってよいかもしれません。
Pについては、イギリスで大規模な調査が行われ、1995年にその結果が発表されました。
やり方はかなり徹底しています。
まず、16万人もの人々に調査の協力を依頼しています。
対象年齢は45歳から64歳までで、やはり全員が男性です。
女性を調査しないのは差別ですが、心筋梗塞は男性に圧倒的に多いため、やむを得ません。
調査を計画する研究者としては、どちらに転んだとしても、できるだけはっきりした結果を出したいのです。
協力した人々には申し訳ありませんが、病気になる人の数が少なすぎると結果もはっきりしません。
女性は心筋梗塞にかかりにくいということですから、怒ることもないと思います。
また、コレステロールが高いことと、心筋梗塞などの病気がないことの2つが必須条件になっています。
コレステロールは、食事の影響を強く受けて変化します。
そこでまず、協力者に病院で食事の指導を受けてもらいました。
コレステロールの多い食事を好む人とそうでない人で、コレステロールの検査値は15パーセントくらい違います。
なるべくコレステロールの少ない食事を摂るように指導しました。
その後しばらくして、もう一度病院でコレステロールの検査を受けてもらいました。
食事に注意するだけでコレステロールが下がってしまう人も多いので、この段階で正常になった人は、調査から外れてもらうことにしました。
16万人もの人々に声をかけるのもすごいエネルギーですが、一度来てもらった人にもう来なくてもいいですよ、というのも勇気がいる話です。
食事指導のあとで、コレステロールが極端に高い人にも調査から外れてもらうことにしました。
コレステロールが高すぎる人に、Pだけを長期間飲ませ続けるわけにいきませんから、当然のことです。
最終的に、調査に参加した人は約6000人になりました。
この人たちを年齢、肥満度、血圧、血液検査のデータ、自覚症状、喫煙、職業の各条件が等しくなるように、2つのグループに分けました。
他の調査と同じに、一方には本物のクスリを飲んでもらい、他方にはPを飲んでもらいます。
調査期間中、本物のクスリを割り当てられたグループには、全員に同じ量のクスリを飲んでもらいました。
全員に同じ量のクスリを飲んでもらうということは、ある人にとっては多すぎるでしょうし、別の人にとっては不足かもしれません。
かといって、個人個人の最適なクスリの量は判断のしようがありません。
最適な量を決めるためには、大勢の患者さんに対して長期的な調査で調べるしかありませんから、話が堂々めぐりになってしまいます。
したがって、全員に一定量のクスリを飲んでもらうことにしたのは、科学研究としては最良の判断なのです。
調査は約5年間で終了しました。
本物のクスリを飲むことによって、コレステロールは20パーセントも下がりましたし、心筋梗塞による死亡者もPのグループに比べ30パーセントくらい少なくなっていました。
問題の総死亡ですが、本物のクスリを飲んだほうが、同じく30パーセントも少なくなっていました。
このクスリは、飲んだほうが長生きするという画期的な結論です。
Cについても、ほぼ同時期に調査が行われています。
やり方はほとんど同じですが、1つだけ決定的に違っていたのは、すでに狭心症か心筋梗塞にかかったことのある人だけが調査対象になっていたことです。
狭心症というのは、心筋梗塞の一歩手前の病気と考えてください。
すでに病気にかかったことがある人々ですから、女性も含まれています。
その割合は2割弱ですが、男性と女性で結果に大きな違いはありませんでしたので、まとめてお話しします。
本物のクスリを飲んだグループでは、心筋梗塞で死亡した人も総死亡も、Pに比べ40パーセントくらい少なくなっていました。
もう1つのクスリに比べ、より一層長生きの効果があったということです。
効果から副作用を引くとさて、2つの調査の間には、対象がまったくの健康人か、過去に心臓病があった人かの大きな違いがありました。
クスリの効果を考える時、この違いは重要な意味を持っていて、明確に区別しておく必要があります。
狭心症や心筋梗塞にかかったことがある人は、すでに心臓の血管にコレステロールが溜まっていることになります。
コレステロールが高いだけでは動脈硬化症は起こりませんから、このような人たちは、何か他に病気になる条件をいくつか持っているはずです。
クスリを飲んだほうが得かどうかは、簡単にいえば効果と副作用の引き算で決まります。
副作用のほうが強ければ、引き算の答えはマイナスになりますから、たとえ検査値はよくなっても寿命が短くなるという結果になります。
言い換えますと、他に病気がなくてコレステロールが高いだけという人は、クスリを飲んでもあまり病気の予防にはなりません。
なぜなら、動脈硬化症はコレステロールが高いだけでは起こらないからです。
この場合は、副作用のほうが効果に勝ってしまうことになります。
一方、すでに病気になっている人は、動脈硬化症になるための条件がそろっているはずですから、放置すればどんどん病気が悪くなる可能性が高いと思います。
このような人がコレステロールを下げる治療を受ければ、発病に不可欠の条件が1つ消え、クスリの効果がより鮮明になります。
したがって、健康な人が病気にならないようにクスリで予防するのは、とくに難しいことです。
この理屈は昔からわかっていましたが、改めて、2つのよく似たクスリの調査で実証された形になりました。
これらコレステロール治療薬についての調査結果は、医学に大きな進歩をもたらしたと評価することができます。
とくに、Pの調査結果は画期的です。
調査を行った研究者たちも優秀ですが、クスリの出来ばえがよかったのだと思います。
調査の中止理由ただ、少し気になるのは、どちらも5年程度で調査をやめてしまったことです。
中止した理由はいくつかあります。
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